診療ストーリー
硬い物を噛むと右顎と目の周囲が一緒に痛んだ症例
右目の痛みから始まり、その後、硬い物を噛むと右咬筋部の痛みと右目周囲の熱感・不快感が一緒に現れた非識別化症例です。口は開きましたが、右顎に音がありました。
右目の痛みから始まり、その後、硬い物を噛むと右咬筋部の痛みと右目周囲の熱感・不快感が一緒に現れた非識別化症例です。口は開きましたが、右顎に音がありました。
目の痛みや熱感には多くの原因があります。この患者で記録された変化は、他の人に同じ診断や反応を保証するものではありません。
患者は症状が約3年続いた後、2024年に初めて来院しました。
最初は目が痛み、その後硬い物で顎も痛んだ
患者は「もともとは右目が痛かったです。だんだん硬い物を噛むと右顎が痛み、右目の周りが熱く感じます。顎が痛いと目も一緒に痛むようです」と話しました。
顎の痛みとして右咬筋部を指しました。普段より硬い物を噛むと、右顎と目周囲の不快感が同時に現れると述べました。右側症状が続いていたため、左にも同様の不快感があったかは分からないと説明しました。
診療経過の概要
約3年間の右目周囲の不快感と、硬い物を噛む際の右顎痛を一緒に評価しました。全15回のうち注射治療は5回、その他の経過診療は10回で、顎関節装置も計画に含まれました。
初期には右顎の音が先に消えましたが、目の痛みはしばらく同程度に残りました。その後、目の痛みの頻度と全体的な不快感は減りましたが、再び現れたりパターンが変わったりしました。
13回目は目も顎も楽でした。14回目は目の痛みはなく、硬い物で両顎が痛みました。15回目に目と顎の痛みがないことを再確認して診療を終了しました。
目の症状と顎機能症状の変化は、一つの結果にまとめず別々に解釈しました。
顎の問題と目周囲痛は同時に起こり得るか
顎関節・咀嚼筋の不調と目周囲痛が同じ時期に起こることはありますが、目の痛みだけで顎関節の問題とは診断しません。
まず眼疾患と危険徴候を確認し、その後、咀嚼・食いしばり・開口に伴って顎と目周囲の症状が繰り返し一緒に変化するかを見ます。
顎運動、開口量、関節音、咀嚼筋触診を症状変化と比較します。診療後の目の痛み減少は重要な経過情報ですが、当初の目の痛みが顎関節由来だったことを証明しません。
症状は約3年間続いていた
患者は2020年または2021年ごろに始まったと記憶していました。正確な年は確定せず、急な最近の悪化ではなく約3年間の不快感として記録しました。
長く続く症状でも原因がずっと同じとは限りません。目の痛みが始まった時期、後から咀嚼痛が加わった時期、現在のパターンを分けて確認しました。
硬い物での変化を比較した
硬い物は柔らかい物より咬筋を強く使うことがあります。本症例では、その条件で右咬筋部痛と目周囲の不快感が一緒に現れました。
同じ条件で繰り返し変化することは手掛かりですが、顎痛と眼痛の同時発生だけで咬筋や顎関節が眼痛を起こしたとは確定できません。
口は開いたが右顎に音があった
開口不能の状態ではありませんでしたが、開口時に右顎で音がすると述べました。十分に開くという事実だけで関節・筋所見は除外できません。
痛みや機能制限のない音は治療不要な場合も多いですが、本症例では咀嚼痛もあったため、開口量・経路、音の時点、咀嚼筋所見を併せて評価しました。
右目の下の触診で痛みがあった
右目の下を押すと痛みが現れ、その場所と感覚が普段の目周囲の不快感に近いかを比較しました。
触診痛は局所の過敏性を示しますが、それだけで原因や診断は決まりません。眼の状態、顔面感覚、顎運動、咬筋・側頭筋所見を比較します。
目周囲の熱感はまず眼自体の原因と分ける
「目の周りが熱くなる」という感覚は、眼球温度や眼圧の測定結果ではありません。眼科的原因、頭痛、神経学的原因の可能性を顎の診断で置き換えません。
眼を先に確認すべき危険徴候
突然の視力低下・視野変化、強い充血と急な眼痛、光の輪、複視、眼球運動時の強い痛み、嘔吐を伴う激しい頭痛、眼瞼下垂、顔面感覚変化、麻痺があれば眼科・神経科・救急評価を急ぎます。
診療室で確認したこと
目症状の発症・持続、硬い物と柔らかい物の差、右咬筋・側頭筋圧痛、目の下での痛み再現、最大開口量・顎経路、右顎音の時点と痛み、咀嚼・食いしばりでの変化を確認しました。
歯・歯肉・補綴物を確認し、必要に応じ顎関節画像や眼科など他科の結果も参照しました。TMDは一検査だけで決めず、痛みの部位・誘発条件、頭頸顔面診察、顎運動、適切な画像を総合します。
治療計画と受診回数
全15回のうち5回は注射治療で、残る10回は経過確認などの保存的診療でした。この患者の計画には顎関節装置も含まれました。
目の痛みがあるという理由だけで装置を選んだのではありません。約3年の経過、硬い物での顎痛、関節音、触診、顎機能、歯・咬合、装置への適応可能性を総合しました。
2024年の院内装置使用率は約4%
オボク歯科の2024年顎関節来院患者の院内統計では、装置治療は約4%でした。すべての患者に最初から装置を使ったわけではありません。
まず保存的な経過観察、セルフケア、必要時の注射を行い、装置の必要性は別に判断します。長引く関連痛・神経痛様症状に顎機能や咀嚼変化が伴う一部では、他原因、歯・咬合、関節・筋所見、目標、適応を確認して検討します。
4%は当院の2024年診療分布であり、他院やすべてのTMD患者に適用できる割合ではありません。
2回目:痛みは同程度だが顎音は消失
全体の不快感は普段と同じでしたが、初診時の開口時の「ポキッ」という音はありませんでした。音は出たり消えたりするため、消失だけで完全回復とはせず、咀嚼痛、目の不快感、開口、運動を継続評価しました。
3回目:右目の痛みはほぼ不変
顎音はなかったものの他の症状はほぼ同じで、右目痛は初期に近い程度でした。横になって携帯電話を見ると主に痛み、朝夕の明確な差はないと話しました。
その状況は手掛かりですが、姿勢や携帯電話が原因だとは確定しません。画面時間、首・顎の位置、眼の状態、顎運動による変化を分けて考えました。
4回目:同じ状況で眼痛
横になって携帯電話を見ると再び眼痛がありました。繰り返しを記録しましたが、このパターンだけで携帯電話や姿勢を原因とはしませんでした。
5回目:食事より疲労と夕方の影響
食事と眼痛は関係ないように感じ、疲れたときに痛み、横になるたびに痛むわけではなく、強い時とない時があり、全体として少し減ったようだと述べました。
起床時は痛まず主に夕方に現れ、就寝直前も痛む日と痛まない日がありました。以前の「朝夕差なし」と異なるため、どちらも時点ごとの観察として残しました。
6回目:強さより頻度が低下
眼痛が起きた時の強さは同程度でしたが、回数は減りました。強度と頻度は別々に変化し得るため分けて記録しました。
不快感は通常横になった時に現れましたが、眼の状態、疲労、画面使用、首・顎の位置と併せて見る手掛かりであり、単独の原因とはしませんでした。
7回目:LASEK後の眼の休息という混在要因
約1週間前にLASEKを受け、その後目を閉じて過ごす時間が長く、閉眼中は眼痛がなかったと話しました。
眼科手術、閉眼休息、画面使用減少が同時に変わったため、無痛を顎関節診療だけの結果とは解釈せず、術後の眼の判断は施術眼科を優先しました。
8回目:全体的な不快感が大幅に減少
不快感がかなり減ったと述べましたが、その状態が変動なく続くとは仮定せず経過を確認しました。
9回目:寒い朝の徒歩通学で再出現
寒い朝に約30分歩いて登校すると、右顎がしみる感覚と眼痛が時々ありました。前回は不快感がありませんでしたが再び現れました。
冷気、歩行、朝の時間、眼の反応、顎首の緊張、姿勢はいずれも関連し得ます。一つを原因とはせず、改善後の再出現も直ちに治療失敗とはしませんでした。
10回目:一定周期のない間欠痛
眼痛は一定周期なく時々起こり、痛い日と痛くない日が混在しました。症状日の疲労、画面使用、眼の状態、顎の不快感を継続して記録しました。
11・12回目:概ね同程度
11回目は普段どおりで眼痛が少し残り前回と同程度、12回目も新たな明確な悪化・改善なく同様と記録しました。
13回目:目も顎も不快感なし
目も顎も特に不快感がなく、前回以降痛みもなかったと述べました。以前の変動経過と区別し、当時の無症状時点として記録しました。
14回目:眼痛なし、硬い物で両顎痛
眼痛はなく、目周囲に時々何らかの感覚が残る程度でした。硬い物では右だけでなく両顎が痛みました。
13回目の無症状が永続的な完全終了を意味しないことを示し、眼症状と咀嚼関連顎症状を分けて追跡する必要がありました。
15回目:無痛を確認して終了
普段どおりで痛みはないと述べ、14回目の硬い物での両顎痛も今回は訴えませんでした。目と顎の痛みがないことを確認し診療を終了しました。
眼痛と顎痛は別々に追跡する
初期には硬い物で右顎と目の不快感が一緒に現れましたが、後に食事と眼痛は無関係のようだと述べ、14回目には眼痛なしで両顎の咀嚼痛がありました。
眼痛減少は当初の原因が顎関節・咬筋だったことを証明せず、眼痛がないことも咀嚼関連顎症状の消失を意味しません。15回目には両方が再びないことを確認しました。
まとめ
右眼痛が約3年続き、硬い物を噛むと右咬筋痛と目周囲の熱感・不快感が現れました。口は開きましたが右顎に音がありました。
眼の原因と危険徴候を先に考慮しながら、咀嚼条件、顎運動、関節音、咀嚼筋所見を併せて評価しました。
15回で注射5回、その他診療10回、顎関節装置を記録しました。13回目は両方楽で、14回目は眼痛なしで両顎咀嚼痛が再びあり、15回目は目も顎も痛まず終了しました。
一時点の改善で全経過を決めず、眼症状と顎機能症状を別々に解釈する必要性を示す症例です。
よくある質問
顎が痛い時に目周囲も痛むことはありますか
同時に起こることはありますが、眼痛だけで顎関節と診断しません。まず眼疾患と危険徴候を確認し、咀嚼・食いしばり・開口で繰り返し変化するかを評価します。
硬い物の時だけ不快なのは重要ですか
硬い物は咬筋活動が強くなることがあり、柔らかい物との差は有用な手掛かりです。ただし、この反応だけで眼痛の原因は決まりません。
十分に開口できても顎関節・筋を確認しますか
はい。開口量が保たれていても、咀嚼痛、痛みを伴う関節音、運動経路変化、筋圧痛がある場合があります。
顎の診療後に眼痛が消えれば原因が顎だったのですか
いいえ。経時変化は重要ですが、自然変動、眼科治療、休息、画面使用など他の要因も関与します。本症例は一般化できません。
この症例と併せて参照した研究・資料
TMDと眼科・耳鼻咽喉症状
Song HSほか. PLoS One. 2018;13(1):e0191336. DOI: 10.1371/journal.pone.0191336。TMD症状と片頭痛、耳鳴り、一部の眼科・耳鼻咽喉症状の統計的関連を示した横断研究で、個人の因果や時間順序は確定できません。
側頭筋トリガーポイントと関連痛
Fernández-de-Las-Peñas Cほか. Clinical Journal of Pain. 2007;23(9):786–792. DOI: 10.1097/AJP.0b013e318153496a。慢性緊張型頭痛で側頭筋刺激がこめかみ・眼後方への関連痛を生じ得ると報告しましたが、本患者の診断を直接証明しません。
TMD起因の頭痛と併存頭痛
Sharma Sほか. Pain. 2023;164(4):820–830. DOI: 10.1097/j.pain.0000000000002770。TMDに起因する頭痛と別に併存する頭痛を区別する必要を示し、同時発生だけでは不十分です。
眼の灼熱感と神経障害性眼痛
Kalangara JPほか. Pain Medicine. 2016;17(4):746–755. DOI: 10.1093/pm/pnv070。眼の灼熱感における眼表面・神経障害性機序を論じ、眼の状態、疲労、画面使用、LASEK後経過を別に確認する根拠です。
追加案内
米国国立歯科頭蓋顔面研究所のTMD案内と、米国眼科学会EyeWikiの緊急眼科案内も、顎評価と眼の危険徴候の整理に参照しました。