診療ストーリー
耳の痛みと顎関節痛が同時に現れたケース
右耳痛が咀嚼・あくび時の顎関節痛とともに現れた匿名化診療ストーリーです。まず保存的な顎関節対応を行い、耳由来の原因も鑑別に残したまま3日後の初期変化を確認しました。
右耳痛が咀嚼・あくび時の顎関節痛とともに現れた匿名化診療ストーリーです。まず保存的な顎関節対応を行い、耳由来の原因も鑑別に残したまま3日後の初期変化を確認しました。
一人の経過だけで耳痛の原因や治療効果は証明できません。耳疾患、歯・唾液腺疾患、神経性疼痛、顎関連組織など原因は多様で、評価もその幅を保つ必要があります。
主な観察内容
最近の右耳痛は約2〜3週間続いていました。
咀嚼時痛はVAS 5〜6でした。
あくび時痛はVAS 5〜7でした。
初回の再評価は最初の処置から3日後でした。
耳が痛ければ必ず耳の病気ですか
耳疾患は重要な最初の検討対象です。外耳炎、中耳炎などでも痛みが生じるため、耳症状を軽視してはいけません。
顎関節は耳のすぐ前にあり、周囲には咀嚼筋と感覚神経経路があります。関節や筋由来の痛みが耳の前や耳の中に感じられることがあり、関連痛の一型と説明できます。
これはすべての耳痛が顎関節由来という意味ではありません。耳疾患、歯・唾液腺疾患、神経性疼痛などを区別し、その上で咀嚼、あくび、開口により耳と顎の痛みが一緒に変化するかを確認します。
初診時に訴えた症状
患者の主な訴えは次の通りでした。
咀嚼時の右顎関節周囲痛
あくびや大きな開口で痛みが増す
約2〜3週間前に始まった右耳痛
左顎関節にも軽い不快感
病歴では顎の不快感は20年以上、開けにくい感覚は高校時代から約30年続いていました。患者は前年の歯科治療後に痛みが始まり、約6か月続いたと感じていました。
歯科治療時期と発症時期の近さは重要な病歴ですが、時間的順序だけで治療が直接原因とは言えません。現在の歯、咬合、顎運動、筋状態、生活習慣を総合評価します。
睡眠中の食いしばりと、前年にボツリヌス毒素治療を受けたが明確な効果を感じなかったことも話しました。過去の体感だけで次の方針を決めず、現在の状態を再評価しました。
初診時の痛みの程度
耳痛:VAS 2
咀嚼時痛:VAS 5〜6
あくび時痛:VAS 5〜7
耳痛は比較的新しく、顎を動かす場面では右関節痛がより強く現れました。顎機能を調べる手掛かりですが、耳痛の原因を確定する所見ではありません。
何を評価し、最初に何を選びましたか
開口量と顎運動経路、関節・咀嚼筋の圧痛、咀嚼・あくびでの痛み変化、食いしばり習慣、過去の治療反応を確認しました。
食いしばりと筋緊張があるため、今後の選択肢としてボツリヌス毒素治療も説明しましたが、初回には行いませんでした。まず保存的な顎関節対応を選び、初期反応を確認して次の方針を決めることにしました。
この順序は特定治療が常に優れるという意味ではありません。選択と時期は現在の痛み、機能、所見、既往反応、個別のリスクと希望で変わります。
3日後に確認した初期変化
患者は耳痛を感じなくなったと話しました。
あくび時痛はVAS 5〜7からVAS 2へ変化しました。
咀嚼時痛は薬効中ほぼなく、効果が弱まるとVAS 2〜3でした。
匿名化写真は診療中の開口範囲を記録したものです。定規の角度や画面から新たな数値を推定せず、記録値、痛み、機能変化を総合して解釈します。
これは初回処置3日後の初期経過で、治療終了結果ではありません。耳痛が先に減り咀嚼・あくび時痛も改善しましたが、この時間的関係だけで耳痛が顎関節由来とは証明できません。
耳痛と顎機能が関連し得る仕組み
顎関節は耳の直前にあり、関節と咀嚼筋の感覚情報は三叉神経経路を通ります。そのため一部では関節・筋痛が耳周囲に感じられます。
次の特徴が重なる場合、耳由来の原因を確認しながら顎機能評価も検討できます。
咀嚼時に耳前と顎の痛みが一緒に増す。
あくびや大きな開口で痛みが増す。
口が開きにくい、または顎が引っ掛かる。
関節音に痛みを伴う。
食いしばりや歯ぎしりがある。
関節・咀嚼筋の触診でいつもの耳周囲痛が再現される。
耳科・救急評価を優先する危険所見
突然の聴力低下、片側聴力の急速な悪化
耳から膿、分泌物、血が出る
高熱と耳周囲の強い腫れ・発赤
強いめまい、歩行不安定、反復する嘔吐
顔面麻痺、感覚異常、その他の神経症状
外傷後の耳痛または聴力変化
これらがあれば顎関連の説明より耳鼻咽喉科または救急評価を優先します。
この症例で分かること・分からないこと
長年の開口制限と顎の不快感に最近右耳痛が加わっていました。すぐボツリヌス毒素治療を繰り返さず、まず保存的対応を選び、3日後には耳痛を感じず咀嚼・あくび時痛も低下しました。
単一症例から耳痛の原因や治療効果を一般化できません。ただし耳痛が顎運動で変化し、関節痛、開口制限、食いしばりを伴う場合、単一原因を決めつけず耳と顎を並行評価する理由を示します。
参考文献
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